2011年上半期ニコマス20選・後編

中編からの続き。
もうちょっとだけ続くんじゃ。
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【ノベマス】段違い連立方程式【短編】

作: kyeP(仮)

今期のノベマスにおけるひとつの流れとして、アイドルの画像が登場しない作品が増えた事が挙げられると思います。
2010年以前にも何作か観る事はありましたが、ここ数ヶ月は明らかにその数を増やしているなと。
これは1つには、ノベマスのビジュアル面での強化が進行し、一般的な立ち絵で作品の個性を表現するのが困難になりつつある事。
また他方では、アイマスという共通の枠の中では、絵に頼らずとも彼女達の姿を容易に思い描けるという事。
そして作り手が、自分に合ったスタイルでノベル系動画を作れる程度に、ノベマスというジャンルが成熟したという事。
色々な要素から現出した潮流だと思われます。
そうした流れの中で登場したのが、kyeP(仮)氏による作品。
中学校でのやよいの姿を、彼女の後輩である1人の男子学生の目線から描いた短編ノベルです。
やよいは765プロ内では年少組であり、プロデューサーや他のアイドルにとっては妹に近い存在になる事が多いキャラクター。
そんな彼女を、アイドルという存在に対して興味が薄い、普通の後輩の目線から描く事で、事務所では見る事ができないやよいの姿を浮かび上がらせる事に成功しています。
もう一つの特徴としては、場面転換時に挿まれる、本筋とは別のテキスト。

これによって、見る者は思考をひと段落させる事ができます。紙面や通常のSSとは異なる、動画としての文章を読ませる上で、こういったインターバル的な演出はとても有効なのではないでしょうか。
そういった「読ませる技」の冴えと、学生らしさを巧く表現した本文によって、テキストと背景画像、そしてBGMのみでの約8分間が、非常に魅力あるものに仕上がっています。

ラストの言いまわしは、思わず「やられたー!」と口に出した程の鮮やかさ。御見事でした。
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【アイドルマスター】おサルな双子は明日生まれ変わる?

作:リボセイントP

告白します。私はSPの時から、亜美真美のプロデュースが苦手でした。
とにかくコミュで噛み合わなくて。ストーリーモードはともかく、フリーモードでは彼女達を育てるビジョンを描くのが非常に難しかった覚えがあります。
アイマス2で真美をリーダーとしてプロデュースし、竜宮小町となった亜美を見つめる日々となった今でも、ふたりの事はやっぱりよくわかっていません。
嫌いなワケはなし、むしろ魅力を感じてはいるのですが、どう近づけばいいのかわからないというのがホントのところ。
そんな私にとって、リボセイントPは理想の亜美真美Pのひとり。
実はちょっと羨ましいのですよ。ははは。

なんと言えばいいのかな。二人と一緒になって楽しんでいる事が伝わってくるというか、二人を楽しませる術を体得しているというか。
二人との距離が、とても近いんですね。それも恋愛対象としての近さではなく、さりとて仕事仲間としての距離でもなく。
そう。つまり「兄(C)」なのです。
その距離感を作品として形にできるというのは、実はけっこう凄い事なんじゃないかなーと思うのです。
この作品は、二人への誕生日プレゼント。
ずっと二人を見てきた事、これからも三人で進んでいく事を伝える、兄(C)からの素敵なビデオレター。

亜美も真美もリボセイントPも、変わったり変わらなかったりを繰り返してきたのでしょうけれど、3人の関係はずっと変わらないでいてほしいなと。
兄(C)として甚だ修行不足な私は、願わずにいられないのです。いいなぁ。
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【アイドルマスター】 『ジェミー』

作:きっさらP

ここ!
コレが見たかったの。愛LIKEハンバーガーのダンスで、特に目を惹く序盤の小芝居(?)。
個人的な好みで言うと、今季ベストの活用シーンです。
「ジェミー」は初の真美ソロ公式曲。真美の為に作られた歌です。
でも、だからと言って、真美がひとりになったわけではなくて、隣には亜美がいるし、周りには765プロの皆がいる。
それは憧れの存在であったり、大切な友達であったり。
そんな中で、自分もちょっとずつ変わっていく。意識して、変えていく。
変化に戸惑いつつも、それを肯定して輝きを増していく真美の姿が、とても眩しく見えるのです。

「ダイヤモンドだけが最高じゃない」のカット。
ののワってますなぁ。そしてシルエットは「ダイヤモンド」=輝きの象徴としての春香さん。
うまいなぁ。
こういうところで遊んでくれるのも、見ていて楽しいし嬉しい。
それにしても、モノマネが得意な真美が「自分だけの輝きを磨く」ってのは、なんかこう、グッときますね。
エメラルドは輝石の中でも扱いが難しく、ちょっとした事で割れてしまう繊細な石です。
しかし、それ故に古くから愛され、その魅せ方が研究されてきた石でもあります。

エメラルドの宝石言葉は「喜び」「希望」そして「新たな始まり」。
誕生日に相応しい、キラキラの詰まったPVでした。
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【ノベマス?】もしもThe Quiz m@sterがフルボイスだったら

作:ATP
今回の1P1作限定で最も泣かされたのは、ATPでした。
うちのブログとしては、やはり「Watch Out Pt.2 (VS. 竜宮小町)」を選ぶつもりだったんです。
でも最終選考の段階まで進んだところで、この作品がATP作だと気付いちゃいまして。
どうしたものか迷ったのですが、初見時に鼻からアイスコーヒーが出ちゃったという理由でこちらを選択。
後悔はしていない。

ATPの凄いところは、人を楽しませる為の武器を多数、しかも多種持っていて、常に見る人を飽きさせないところ。
「えっ、これもATPだったの?」なんて、マイリストを見返していて思っちゃったのです。
アナグラm@sterとかパンダとかエレクトロニカとか。
柔軟な頭をお持ちなんだろうなぁ。
もうひとつの強みは、手持ちの武器同士を組み合わせる事で威力を高める結合力。そして、ネタを動画におとしこむ瞬発力。
この作品、タイトルにある通りアイドル達は「フルボイス」なのですが、その使い方がもう、秀逸で。
一問目の伊織で動画の趣旨を理解した瞬間、軽くむせました。
そして、9問目の美希で完全にやられました。普通に勉強になったし。

他にも千早の扱いとか最後の伊織とか千早の扱いとか、もう面白すぎて大好きです。
ひとつだけ残念だったのが、サムネ。

サムネサイズだと文字が潰れちゃってたのが惜しかったなぁと。
再生サイズで見ると実にいい画なだけに、もったいないなぁと。
そう思っちゃうくらい好きな作品です。大いに笑わせてもらいました。
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【アイドルマスター2】彼女はBeautiful Monster

作:mizuchiP

アイマス2発売後、第4段DLCにて「きゅんパイア」と共に登場したアクセサリー「ヴァンパイアセット」。
詐胸イルPをピンポイント爆撃したマウスピースや深紅のネイルなど、非常に面白いアクセの出現に、ニコマスは沸き返りました。
そんな中で、いち早くこれらの特徴を活かしきった快作となったのが、この「彼女はBeautiful Monster」でした。
モノクロームのステージに立つ年長組3人から始めるステージ。
曲の盛り上がりと共に色を帯び、やがて衣装が紅に染まると同時に「She is the Monster……Beautiful Monster」というサビの流れ。
そして、他のアイドル達と踊るステージの最中に挟まれるワンカットが、私の心を鷲掴みにしました。

ここ。
モンスターの象徴たる牙をちらりと見せて笑う、このりっちゃんにやられました。
3人が闇の正体を見せるカットだけ、画面の色調が変化するのも印象的。
更に凄いのは、この律子と存在そのものがある意味ヒトを越えている貴音を従えて、なおぶっちぎりの存在感を見せるあずささん。

この色気は何事かと。
「彼女はモンスター。でも俺は構わない。恐怖すら俺を虜にする」という歌詞が説得力ありすぎて困ります。
クライマックスではバックダンサーのアイドル達をも眷属に引きずり込み、闇へと帰っていく彼女達。
ステージをダンスとカメラカット、ライティングでここまでドラマティックにできるのかと驚嘆しました。
ついでに、この作品が世界の新着動画を完走したのも嬉しかったなぁ。いいものは認められるのですよ。うん。
……歌詞つけたいなぁ(ボソッ
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アイドルマスター 伊織 「I Wanna Be Your Dog/Emilie Simon」

作:親父の味P

上半期最終日に投稿され、私をぶん殴ってくれた作品。
いやぁ、この伊織はヤバいですよ。
「あなたのイヌになりたいの」と耳元で囁くように歌う、この妖しさ。
先の年長組トリオが持つ魅力とは全く異質の色気を纏う、14歳の伊織。
奇しくもgouzouさんが、MA2セカンドシーズンレビューにて「ロリータを捨て少女の魅力で勝負している」と15歳の伊織を評していますが、この作品では逆方向へ振り切った伊織を見る事ができます。
未完成の美というんでしょうかね、こういうの。

コミュシーンを背景に歩む伊織。
犬は人間のパートナーとして古い歴史を持つ動物です。
この歌、男性を誘惑する歌詞なのは間違いないのですが、「貴方のパートナーでいたい」という解釈をすれば、別の見方もできるワケで。
永遠に14歳を生きる伊織からの、悲痛な叫びにも聞こえてきます。
そして、そんな最中に見せる、強い視線。

犬は忠誠心と従属性の象徴であると同時に、予測できない野性を秘めた存在としても位置付けられます。
この伊織がどう見えるか、どう感じるかは、受け手の伊織観と直結しているのかもしれません。
光の当て方次第で様々な表情を見せるダイヤモンド。
それが伊織なのかなと。そんな事を感じたのでした。
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サムネ一選
バイバイ この花添えて

作:卓球P

私達は、貴方の大きな背中が大好きです。
これからも変わらず。
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以上、20作品+サムネ一選でした。
マイリスト版はこちら。

選者:K_1155
最後になりましたが、今回も企画を立ち上げていただいた卓球Pはじめ運営の皆様に、感謝申し上げます。
普段あまり聴く機会のない、自分以外のアイマス動画ファンの「好き」が一堂に会するこの企画、私は大好きです。
さぁ、他の方のリストを巡るぞ。地獄は始まったばかりだぜ!