ショッキングな彼女

※この記事ではショッキングな表現を含む作品を扱います。苦手な方はご注意を。
問題無いという方は、続きからどうぞ。
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今回の記事のきっかけとなったのは、こちらの作品。
きれいな出落ち

作:しくP

この作品、歌詞を聞いてみると崖から落ちるのは「昔の夢達」であり、要するに「過去は捨ててまた歩き出そう」という歌なんです。
実際、作中でも春香さんは断崖に背を向けて帰ってしまいます。実際に身を投げるワケではありません。
が、まぁ作品のキモは、ここなワケで。

しくP御自身もマイリストにおいて「出落ち部分がやりたかっただけ」と仰っていますし、そういうことなんでしょう。
で、当然の流れとして、こちらを思い浮かべるワケです。
アイドルマスター ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!

作:sqt氏

この作品の分析については、Vinegar56%氏が非常に読みごたえのある、かつ解りやすいまとめ記事を書かれているので、是非ご一読を。
すごろく妄想格納庫 (2が出る日まで):アイドルを殺すのは難しい
カズマ氏やペンタP、そしてVinegar56%氏の記事本文に関しては、はっきり言って追記する余地が無いなぁ、という感じ。お見事です。
じゃあ、なんで今さら記事にするかというと、記事に寄せられたコメントで「現実」と「虚構」に関するやり取りがあり、それが面白かったから。
ブログTomFの二次資料室のTom氏が、時代劇とアニメの殺陣との差について言及しておられます。
演技として死ぬ現実の俳優と、実際に死ぬアニメのキャラクター。
実に面白いです。
ところで、アイドルマスターのアイドル達は、どちらでしょうか?
アイドルマスター 【livE】 秋月律子

作:うてにゃんP/ほっちP/トカチP
「倒れてる小鳥さんの周囲に血が広がっていたとしたら」

この律子は夢の中のイメージであり、作中で死ぬわけではありません。つまり「嘘の世界」です。
ですが、実際には律子自体がゲームのキャラクターである以上、この「嘘の死」は「キャラクターとしての死」と見分けるのが非常に難しい。
また、この作品自体が夢と現実(ゲーム内での、という意味での「現実」です。いわゆる「リアル」とは別)の入れ子構造となっている為、更に解釈が難しい。
それ故に強烈なインパクトを視聴者に与えます。決して時代劇的な意味での死では、ない。
うてにゃんP御自身による解説記事を読むまで、この作品の置き所について、かなり悩みました。まぁ、それが楽しかったりもするんですが。
こうした作品は、他にもあってですね。
【R-18】ミナセイオリFランクアイドル時代の秘蔵映像【流出】

作:tloP

これはtloPのブログにて連載されていたSS「伊織と俺のプロデュース」による補完を前提とした作品で、そのクライマックスにおいてこの「流出映像」が「実は伊織が主演する映画のPVである 」という真実が明らかになるわけです。
ただ、その演出故に、この作品単体ではどうしても結末が「投げっぱなし」の状態になってしまいます。
コメディーからの落差として「投げっぱなし」を利用した「ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!」に対して、こちらはSSへの布石として動画全てを用いた形。
そしてこれも、虚構と現実が入り混じった作品。
ラストに現れる「この動画はフィクションです〜」という注釈にしても、そもそも「アイドルマスター」というフィクションの枠内での事なので、何がノンフィクションなのかという疑心暗鬼が生じるワケで。
おそらくは、そこまで狙っての作りなんでしょう。動画投稿とSS連載のタイミングも含めて。
リアルタイムで追っていた人は大変だったろうなぁ……と、後から追いついた者としては想像するしかないのが残念な所。
追っていたらいたで、胃が痛かったでしょうけど。
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自分にとって彼女達は、虚か実か。
アイドルの死というショッキングな演出は、そういった事を考える契機になり得ます。
そして、作品そのものが「物語」であるNovelsm@sterや架空戦記よりも、アイドルである彼女達の日常により近く、またニコマスにおいてメインストリームであるPVの方が、その衝撃は大きいでしょう。
その衝撃が嫌悪感なのか、あるいは解放感やカタルシス、もしくは生の輝きを見た感動なのか。
「びっくりした」で終わらせず、その先を見つめてみるのも面白いと思います。
あんまり続けて見るのは精神上よろしくない(実体験上)ので、そこは注意が必要ですが。
「アイドル達は存在するのか?」
この問いが消えない限り、こうした作品達はこれからも生まれてくるでしょう。
アンダーグラウンドとして、細々と。しかし確実に。
ではでは。