2012年下半期ニコマス20選・前編


ということで、今期もATPはじめ有志の皆様主催により、はじまりました。
2012年下半期ニコマス20選

基本レギュレーション
・対象は2012年下半期(7月1日〜12月31日)に公開されたニコマス作品
・自身のセレクトを20作品以内でブログ及びマイリストにて公開
1Pにつき1作品
※作品と一緒にP名を表記していただけると非常に助かります

再びニコマス好きがこうして集まれる事、その場を提供していただける事、本当に嬉しく、有難く思います。
リスト提出の前に、まずは御礼を。
そして、この半年の間に素晴らしい作品を生みだし、私達に見せて下さったプロデューサーの皆様にも。
ありがとうございます。2013年も宜しくお願い致します。
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集計用(+ひとことコメント)のマイリストはこちら。
2012年下半期ニコマス20選+1

選者:K_1155
今期は「タイトル1選」は無し。いや、前回のインパクトあり過ぎただけなんですけどね。
そんなワケで、今期の動画数は21。いつも通り日付順に並べてあります。
前編では、サムネ1選からNo.10までを御紹介。それぞれの動画へのコメントを添えて。
それではまいりましょう。
アイドルマスター 「Sunny Day」【再投稿】

作:096%P/夜雀P

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あの日、この蝶をモニタ上に認めた瞬間の驚きと喜び、そして感謝の想いは、今も強く持ち続けています。
ありがとう。おかえりなさい。今期、これに勝るサムネはありません。
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01
アイドルマスター2+... ジュピター+... 「hello good-bye 2012」 -JUPITER SONIC FES 02-

作:じゅっP

この動画は、ジュピターという存在がアイマス世界の中に生まれ、立ちあがり、走ってきたこれまでの日々、
その旅路におかれた一つの碑です。
敵だった彼等が喜びを知り、一人のアイドルが笑顔を取り戻す為の助力となった、その記念碑。
そしてこれは、アイマスの「2ndVision」の姿。
平坦ならざる道を進んできたのは、ジュピターだけではなかったし、その先の輝きに辿り着いたのもまた、ひとりではなかった。

これからも、彼等は走り続けるのでしょう。
彼等の道を照らすファンと、その背を押すプロデューサーがいる限り。その旅程が幸多きものである事を信じたくなる、
優しい作品です。
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02
ζ*'ヮ')ζ<いんすとばんどのうた!

作:柏城P
初見時に書いた感想は、こちら

やよいの「一人で考え実行する」という特性は、彼女の暮らす環境と直結しているもので、それが描かれる時、私は少し胸が痛くなるのです。
それは彼女が望んで得た力ではないだろうから。
そして、その力がもたらす結果を、彼女は全て受け止めようとしてしまうから。あの小さな体で。

でも、彼女を突き動かす力と、その力に身を任せた時に見せる笑顔が、この上なく愛おしい事も、私は知っています。
だから私は、がんばる彼女を見る時、少し切なくなるのです。
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03
アイドルマスター Oh!

作:キウイP
美希というキャラクターへの感情移入を排してみた場合、この動画はニコマス的というより、一般的な意味でのPV、
つまりプロモーション・ビデオとしての完成度が極めて高いなという印象をうけました。

曲の流れを巧みに拾いあげるダンス、見る者を飽きさせない衣装チェンジやカメラワーク、赤い糸やハートなどのギミック、
それでいて、一見でお腹いっぱいにならない程度に抑えられたエフェクト。美希自体がビジュアル効果そのものですしね。
耳慣れないフレーズが並ぶハングルの歌詞も、美希語と対応させる事で逆に「初見はダンスを、2周目は歌詞を」という様に
動画を繰り返し見せるフレーバーとして作用しているように思われます。
PVの命題である「曲をくりかえし聴かせ、虜にする」という難しい仕事を、見事にやってのけているなと。

一方でこれを美希の曲として聞いた場合、私はこの美希に、SP時代の美希を見ていました。
とかく「なかったこと」にされがちな彼女の過去ですけれど、今の彼女が、こうした悲恋の曲を歌いこなす事ができるのは、
あの美希がいたからなのかな、などと、SPからプロデューサーとなった私などは思うのでした。
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04
【MAD】思い出話

作:クマ山P

穏やかだったり、華やかだったり、何となくしか覚えてなかったり
自分のことだったり、相手のことだったり、二人のことだったり
――クマ山Pによる動画説明文より

この言葉と、この動画があれば、もう何も語る事はないだろうな、というのが正直なところ。
その上で、無粋を承知で書くならば。
私は、ニコマスで描かれるアイドル同士のコミュニケーションというものに強い関心があり、故にテキスト系動画や
ストーリー系PVを中心に視聴する傾向があるのですが、この動画を見て、こんなにも美しく濃厚な表現があるのかと息を呑みました。

これはきっと、雪歩の夢。二人で頂点のステージに、と。でも伊織はそれを優しく退けています。伊織には、竜宮小町があるから。
そしてそれは雪歩には実感できていない。そのことは、七彩ボタンのシーンを見ればわかります。

その上で、伊織は別の未来を語るのです。それに笑顔で耳を傾ける雪歩。
常に同じ方向を見るだけが友情ではない。それぞれの想いがあり、それを尊重し、そして重なり合う。
ああ、このふたりは真に親友なのだと、あたたかな気持ちになりました。素晴らしい。
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05
【響】隅田川【雨曝し】

作:森永ダーくっP
「12年下半期は、響が輝いた半年間だった」と言って、否と答える人は、ニコマス内では少ないのではないでしょうか。
それが過去の云々に対するカウンター的な側面があったにせよ、彼女の魅力が見出され、多くの場面で花開いたのは喜ばしく思っています。
ただ、その花は突然満開になったワケではなくて、響というキャラクターがニコマスという地に根を張り、多くの人によって
慈しみ愛されてきたからに他ならず、この動画はそうした、プロデューサーひとりひとりの想いの積み重ねの貴さを教えてくれるのです。

花火が輝く船上のステージで、ひとり歌い踊る響。その姿はやっぱり小柄で、ともすれば儚げにも見えます。
でも、彼女は花火の光の中に、プロデューサーと重ねてきた多くの思い出を見、それらへの感謝を胸に抱いて、想いを歌に乗せる。
それができるだけの支えが、響の中にも育ったのだと、その事がとても嬉しかった。そして、そんな響にプロデューサーが贈った衣装の意味にも。

ハピネスルミナス:荒地に群生する水色のルピナスがモチーフです。 ルピナスラテン語の狼が語源。
荒地でも逞しく育つことからその名が付けられました。願わくば、あなたのアイドルも…! 花言葉はいつも幸せ。

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06
【ノベマス】うずくまる君は猫の死骸に似ている

作:ジョンQP/圧倒的P

猫が登場するノベマスにハズレなしというのは、ノベマスフリークの間ではもはや常識。最初に言ったのは誰なんでしょうね?
それはそれとして、なかなか衝撃的なタイトルの今作品で描かれているのは「プロデューサーとは何か」という、とても重い主題。
多くのプロデューサーが悩み、挑んできたテーマであり、ジョンQPご自身が動画説明文において

嫌われてもいい、憎まれてもいい、それでも僕はこの物語を書きたかった。

と書いている通り、プロデューサーを志す者の内には、常にこの問が渦巻いているのでしょう。
作中のプロデューサー「俺」は、仕事振りにおいて極めて有能な手腕を持っています。
それは多忙を極める描写によって明らかであり、また移動中の車内での会話も、それを裏付けます。

これ、活動初期の伊織コミュですね。このPはパフェコミュをとっています。難度の高い営業で、御見事。
……それだけなのか?というのが、この作品。
プロデューサーとは何なのか。一人の少女に対して、何ができるのか。何ができてしまうのか。
車内でのやりとり、些細な温もりに縋る伊織の姿を愛おしく思う私は、いったいなんなのか。
物語のラスト、無力感に苛まれる「俺」の姿は、この物語を紡ぎ出したジョンQPの叫びなのかもしれません。
圧倒的Pによるイラストと相まって、心の奥へと突き刺さる一品。
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07
ショートコント 「箱」

作:利休P
箱と聞いて!
なんという俺ホイホイ。あ、タイトル一選も兼ねようかな。そうしよう。

ニコマスで物語を描くにあたり、プロデューサーの皆さんは様々な素材を用いています。
いわゆる立ち絵に始まり、手描き、MMDねんどろいど、切り絵に粘土細工などなど。
およそあらゆるものが素材となる中で、利休Pが選んだのが「マグネット」と「ホワイトボード」。
そう、この作品ではキャラクターだけでなく、彼女達が置かれた世界もまた特殊であり、必然性があるものなのです。
利休Pは元々ショートショート的な作風に才を見せ、短時間で見るものの心理をひっくり返す達人なのですが、この作品では
そのスキルを存分に味わう事ができます。
僅か40秒足らずの「世にも奇妙な物語」、お楽しみあれ。
また、この作品のメインキャストに真美が選ばれた事も、今期をよくあらわしています(単に手持ちのキャラだっただけな気もしますが)。
765プロの面々を観察し、考え、積極的にアクションを起こす真美。この半年間で、そんな真美を何度か目にしました。
「真美らしさ」が端的に確認できるという意味でも、とても楽しめるショートコントです。
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08
アイドルマスター 「 SUMMER GODDESS 」

作:ラッキP

はい、勝ち確定。
もうこの導入部だけで決まりでしょう。モノクロームの中で映えるハイビスカス、白く浮き上がるフェアリーの肌と笑顔。
なにこの溢れ出る名品臭(?)。
タイトル後は一転して、柔らかななライトの中でのインストダンス、これがまた、バッシバシに決まるんだわ。
七彩は万能と言いますが、ここまでピタリと合わせられると、ぐうの音も出ませんね。素敵。
あと、ビビッドビキニって正直あまり好きな衣装ではなかったのだけれど、まったく下品に見えないんですね。
ライティングもカメラも上品だからこそ、かな。
で、このPVは「iM@S JAZZ FESTIVAL 2012(iJF12)」参加作品という事で、当然使用曲はジャズ。
ジャズはメインテーマとなるフレーズの後、各奏者によるアドリブが入り、最後は掛け合いによってクライマックスへ、というのがおやくそく。
そのジャズという音楽スタイルを、ダンスによって見事に表現していて、唸ってしまいました。

響によるサックスパート。HHbのダンスがもう完璧。いいスクショも取れたし大満足。ここからピアノパートがまた、いい塩梅。
要するにですね、最高なワケですよ。みんなもっと見れ。
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09
イオリン・天使の詩

作:**P
今期、**Pは創作速度においてもクオリティーの高さにおいても、図抜けてた感があります。なんか心配になるレベル。

この方の構成力や発想力については、他の方が語ってくれると思うので、今さら私が言うまでもないかな。
なので、この方が描く「悲劇」の特殊性について、少し。
今作に限らず、**Pが展開するストーリーの多くは悲劇に分類されます。
伊織は登場の時点で死亡しており、雪歩と心を通わせたのも束の間、貴音によって否応なく消滅させられてしまう。
別の作品では、プロデューサーに否定された真がロボットの世界に身を置こうとしますが、真から自我を学んだロボットは暴走、
人間社会を攻撃したあげく、美希によって破壊されます。真には、何の救済もないままに。
あるいは、嫉妬から始まる連鎖殺人。あるいは、邪神召喚による大量失踪事件。
仮にノベル形式でこれらを作品化したら、喜劇として見られるとは、私にはとても思えません。
(そんな中で千早と響の物語についてはまったく異なるスタンスをとっており、実はこちらに**Pの本質はある気がしますが、
 今回は置いておきます)
ですが、**Pの作品においては、見る者はこれらの物語を「楽しんで」しまうのです。大いに笑い、ツッコみ、あっさりと受け入れてしまう。
それはコミュシーンを分解し、再構成し、さらにステージをも巻き込んで展開するという、独自の手法から生まれる「劇場性」が
大きく作用しているのでしょう。
悲劇をエンターテインメントとして披露する胆力と、他者が楽しめるラインを見極めるバランス感覚。私は何よりも、それに驚嘆しています。
で、何故この作品を選んだかというと、とてもシンプルな事で。

このカットで、伊織の手をそっと握る雪歩の親指に惚れたから。それだけです。
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10
サファイアの湖

作:玉音氏

歌い手は洗顔料のCMなどにも出ていました。色んな歌をダーっと聴いたあとにこれを聴くとスッキリする感じ、
透明感があるのでリセットに良いかもです(向く人向けw)。
――玉音氏による動画説明文より

はい、向く人です。
確かにこの動画、実にこう、思考や視界をクリアにしてくれるんですね。制作者の狙い通りに。
しかし、制作の意図と実際の作成物が合致し、更に見る者にも伝わるという事の、なんと稀有な事か。なんと素晴らしい事か。

歌。ダンス。ステージ。衣装。アイドル。
これでいいし、これがいいんだよね、としか言えないんだなぁ。

ここでふわっと揺れるリボン。何かに目覚めそうでした。あぶない、あぶない。
今期の「春香さんはかわいい!」枠ですね。素晴らしい春香さんでした。
まずはここまで。後編に続きます。