コメ騒動

9/12追記:いま私が書ける事は全部書いたつもり。
西岡Pのブログ:全てが台無し―雑記帳―に書かれた記事深刻なコメ不足と、そこから派生した話題などを読んで、感じた事などをつらつらと。
まず前提として、私はコメントをどんどんするべきだと思っています。その上で。
※私は現在twitterを利用していない(アカウントは持ってますが絶賛放置中)ので、そちらに関してはスルーで。
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1.そもそも、なぜ視聴者はコメントするのか
西岡Pは上の記事において、次の様に書かれています。

ニコ動ってコメントを通して作者と視聴者がコミュニケーション出来るサイトだったのがコメ率が下がることによってだんだんただの動画アップローダーに近付いてますね。

西岡Pは「ニコニコ動画における動画へのコメントは、視聴者とうp主(ニコマスPに限らず)とのコミュニケーションである」と主張されています。
その考え方に基づけば、なるほど、うp主を応援する為にも、コメントは積極的にするべきでしょう。
でも、コメントって、本来うp主を応援する為のものなのでしょうか?
ニコニコ動画でのコメントは、動画(+その動画へのコメント)を見た視聴者が、その動画に対して書き加えるものです。
その意図は自由で、必ずしもコメントが作者の方を向いている必要は、ありません。
もちろん、動画を見て「作者を応援したい!」と感じたのなら、その想いをコメントという形にするのは大いにアリです。
ただ、作者とのコミュニケーションを意識するかどうかは、視聴者の自由であるべきです。
動画そのものよりも、その場にコメントするのが楽しいからコメントする、ってのも、アリだと思うんですよね、私は。
ここまでは「ニコマス」ではなく、「ニコニコ動画」でのコメントについての私の考えです。
ここからは「ニコマス」でのコメントに限定して考えてみたいと思います。
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2.ニコマスにおけるPと視聴者の距離と視線の向き
先の引用部で私が感じた違和感について、少し考えてみました。
で、気付いたんですが「ニコ動」の部分を「ニコマスPV」に変えると、非常にしっくりくる。
ニコマス動画、特にPV系動画へ寄せられるコメントは、作者であるPへ向けられたものが多く見られます。
その作風、技術、Pのアイドルへの姿勢や過去作品との関連性などなど。
画を見ながら、その向こうに居る作者を強く意識する姿勢というのは、ニコマス視聴者の特徴の一つではないかなと思っています。
他ジャンルではゲーム実況のコメントなどが似た状況ですが、実況では作者が動画中に「声」という形で存在しているのに比べ、ニコマスPは多くの場合、動画内に現れる事はありません。
では、なぜ視聴者は動画内にPを意識できるのか。それは視聴者とPが、動画の外で、様々な方法で接触できるからです。
プロデューサーのブログやIRCTwitter、そしてニコニコ内のコミュニティなどなど。
ニコマスにおいてはIRCとコミュニティ、それに付随した生放送が盛んに利用されていますよね。
(先に書いた通り、Twitterに関してはスルーでお願いします)
視聴者が、動画製作者と(疑似的にではありますが)直に向き合い、言葉を交わす場が多数存在するわけです。
目の前に話をしたい本人が居るのに、横にある伝言板を利用しようとは思いませんよね?
ニコマス動画を積極的に楽しもうという視聴者には、そうして制作者に近付き、自分の声を届ける場が、動画そのものの他に用意されてるわけです。
そうした状態でニコニコ動画上で作品を視聴した場合、視聴者が動画上にコメントを積極的に残すものでしょうか。
更に、そうした場においては、プロデューサーは動画の制作過程であったり、演出の意図だったり、動画に込めた想いだったりを視聴者に伝える事が出来ます。
それらを作者から伝えられるというのは、ファンとしては嬉しいものですが、視聴者と動画そのものとの間に、ある種のフィルターを挿む事にもなります。
言ってみれば、映画を観る前に撮影現場を見学し、監督のインタビューに立ち会い、試写会を経て映画館に行くようなもの。
ニコマス動画が好きであるが故に、もっと知ろうとするが故に、動画を視聴する際に動画そのものよりも、動画の向こうの制作者、ニコマスPに視線を向ける。
こうした視聴者と制作者の近さ、そして動画製作者へと向けられたニコマスファンの視線は、動画上のコメントにどう反映するでしょうか。
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3.「仲間だもんげ!」が作る壁
まず、単純にコメント数は減ります。これはわかりやすい。だって、他でコメントしてるわけですから。
他の場で、確実に聞いてくれる人に向けて発した言葉を、不特定多数が見る動画上に繰り返すというのは、なかなかに面倒なものです。
初見が生放送だった場合は更に難しくて、現在のシステムでは初見時の感動を動画へ反映する事ができません。
「すげぇ!」「カワイイ!」「泣ける」という類の、直情的なコメントが減る要因のひとつが、生放送での出逢いにあると私は考えています。
それでもコメントしようという人達は、本当にニコマスが好きな人達。その動画と作者の事が大好きな方々。
そうした方の残すコメントは熱く、深く、重い。映像技術、ダンスの選択、音質や画質、作者の過去作やアイドルのキャラクター性への言及などなど。
こうしたコメント群は、ゲームである「アイドルマスター」とニコマス、そして動画製作者であるプロデューサーへの強い想いを感じさせます。
そういうのが好きな人にとっては、こういうコメントは非常に共感できるもの。ですが、その比率が高くなってしまうと、
ライトユーザーにとっては次のコメントが入れ辛い、という現象が起きる様です。
「なんかみんなすごいこと言ってるけど、俺だけ「これすげー」ってバカみたいじゃね?」という感じに。
以前「私が勧める『アイマス動画初心者にオススメの一本』前編」でも書きましたが、ニコマスPVに寄せられるコメントは「内向き」なんです。
「仲間だもんげ!」という言葉に象徴されるような仲間意識の強固さが、その外からのコメントを無意識に阻害しているんじゃないかな、と。
また、ニコマス動画(特にPVにおいて)は映像面の進化が凄まじく、動画上に被さるコメントが作品の邪魔になると感じる方も居られる様子。
結局、作品の最後に「GJ」と書きこんでおしまい、という事が少なくないという状況に陥ります。
初期のわかりやすい感想は動画外で発散してしまい、動画上に反映されない事。
その結果としてファンによる濃いコメントと「GJ」だけが目立つ事。
その状況に閉鎖的な感覚を覚え、新たなコメントを呼び込みにくい事。
あとは……単純にして残念な理由ですが、ニコマスを観る事に慣れ過ぎて、感動し辛くなっている事。
私の考えるコメント数の減少傾向の原因は、そんなところです。
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4.今、コメントを集めているPVとは
では、そうした状況でコメントを集めているPVには、どんなものがあるんでしょうか。
10上半期20選の上位作品から、コメント数の多いものをいくつかピックアップして考えてみる事にします。
数字は2010/09/12現在のもの。
IM@S ALLSTARS++ L・O・B・M(リミックス)

作:安息香P
再生数41,485/コメント数2,769

アイマス公式曲「L・O・B・M」を用いたオールスターPV。
動画そのものの可愛さや楽しさはもちろんですが、この動画の特徴はコメントの色。
コメントする度にアイドルのパーソナルカラーにコメントの色が変わり、動画上を華やかに彩ります。
これはコメントしたくなる。「○○色なら××」なんてコメントも、多数見られますね。楽しい。
水瀬伊織 SPECIAL LIVE 〜世界一かわいいって言いなさいっ!!〜

作:アワビP
再生数83,842/コメント数3,507

MMDモデルの伊織によるライブPV。
モデリングの可愛さと圧倒的なライブ感が炸裂する作品ですね。
やっぱり弾幕は強い。コメントによる一体感がライブ映像をさらに盛り上げています。
この「コメントで画面が埋まる瞬間」の心地良さと言ったら。たまらんです。
アイドルマスターGS relations(LIVE) MMDm@ster

作:RidgerP/狡猾全裸富竹P
再生数78,894/コメント数2,923

アイドル達の男性化というジャンルTHE IDOLM@STER Girl's Side
そのMMDモデルによるライブPVです。
作り込みの凄まじさが生み出す驚きと、謎の可笑しさ。カッコいいんだけど、だけど……w。
この動画では、技術的なレベルの高さ自体がネタになってしまっているが故に、コメントの敷居が低くなっています。
賞賛のコメントにすら「w」がついてしまう、独特の空間が形成されていますね。面白い。
アイドルマスター さよならメモリーズ 天海春香

作:トカチP/少年P/DSP
再生数70,641/再生数2,036

春香誕生祭動画。3人のPによる合作ストーリー系PVです。
特筆すべきはコメントされる場面の極端な偏り。5割近くのコメントが、動画の残り30秒に集中しています。
その内容は、スクリーンショット見ていただければわかるでしょう。
この作品の春香さんと、視聴者それぞれの中に居る春香さんへの応援、そして自分達のありったけの想いをぶつけています。
それを成し得たのは、その30秒に至るまでに積み重ねられた作品の力ですね。すばらしい。
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さて。
これらの動画は、何故コメントを集める事が出来たのでしょうか。
楽しさ、一体感、驚き、笑い、そして愛。数を伸ばしているのは、やはりシンプルで感情的なコメント達です。
観る者の感情を激しく揺さぶる動画がコメントを呼び、そのコメントが新たなコメントの呼び水となる。
ニコニコ動画における正しい感動の循環が起きた動画に対しては、みんな黙っていられない、というわけです。
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5.結論っぽいもの
ここまで、ニコマスという集団の特徴であったり、ニコニコ動画(生放送)のシステムであったり、色々な理由からコメントが伸び辛い現状について考えてみました。
じゃあ、私達は、どうすればいいのか。
生放送でのコメントを拾えるようにと、システムの変更を運営に依頼するという働きかけをしている方もいらっしゃいます。
素晴らしい行動力。
でも、みんながみんな出来る事ではありません。じゃあ、どうするか。
先に書いた様に、コメントするって事は感動するって事です。
そして、日々投稿される動画は、常に新たな感動を呼ぶ要素を含んでいますし、視聴者もそれを受けて心を動かされている筈。
その感動を、ニコニコ動画上の作品に残してもらうには、どうすればいいのか。
これは提案というか、私のやり方なのですが。
最初に感動したニコマス動画を、今、もう一度見てみるというのはどうでしょうか。
何も知らないまま、目の前の画面で再生された動画そのものに感動した、その作品に、一度帰ってみては。
そして、見終わった後で何かを感じたなら、それをコメントにしてみましょう。なんでもいいですから。
きっと、そのひとつのコメントが、次のコメントを呼ぶ力になる筈です。
その動画への他の人のコメントだけでなく、あなた自身が他の動画にコメントする為の力にも。
ここまで読んで下さった方は、きっと「もっとコメントが増えて欲しい」と考えている方々の筈。
ならば、誰かの為とかでなく、まず自分の為に、自分がよりニコマスを楽しむ為に、コメント、してみましょうよ。
ニコニコ動画って、そういうものでしょ?楽しみましょうよ。
私は、それでいいと思っています。