遠いアイドル

動画を見ている視聴者とアイドル、あるいはPの皆さんとアイドルの距離感というのは、どんなものでしょうか。
ノベマスの分野では親近感を感じさせるシチュエーションなどで「あるあるw」というコメがつく時、アイドルと視聴者の距離は縮まっていると言えると思います。
またPVでは、例えばシンクロ率の高い動画ではその違和感の無さから臨場感を得、結果として距離を近く感じる事ができるでしょう。
そして、そういった瞬間は動画を見ていて「気持ち良い」と感じる事が多いはずです。
動画との一体感が快感に繋がり、それを自他のコメントによって更に共有できる。それがニコニコ動画の人気の理由の一つだと思います。
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一方で、アイドルと見る側との間に、あえて距離を感じさせる作品も存在します。先日P名を伏せて投稿されたこちらなどは、その代表例でしょう。
【ニコニコ動画】春香 愛されない恋人

この春香さんとの間に感じる、絶望的なまでの距離はなんなんでしょう。こちらを向いているのに、こちらを見ていない。瞬きや白い息などの演出によって春香さんが確かにそこに居る事を描写しているのに、それを見ている側は臨場感よりも疎外感を感じてしまいます。
こうした作品は先に書いた様な「一体感による感動」とはかけ離れたものですが、それ故に心を強く揺さぶってくる何かがあるのかもしれません。こういった作品が生まれるのもまた「アイドルマスター」の懐の深いところだなぁと思ったり。
というわけで、今日はマイリスト中のPVからそうした「遠さ」を個人的に感じた作品をいくつかご紹介。
【ニコニコ動画】「ガラパゴス」

作者:柏城P
2009下半期20選に選ばせていただいた「【ニコニコ動画】Nicom@sRockFes’09 アイドルマスター サーティーン」に近い演出を用いたPVなのですが、この作品からはより強い力を感じました。
柏城Pといえば雪歩、のはずなのですが、この作品の雪歩は他のどのアイドルよりも遠く描写されています。見ていて不安になるほどに。しかし同時に、その存在感を誰よりも強く見る側に残していくのも雪歩だと思います。
この雪歩は何故こんなに遠いんでしょうか。考えずにはいられません。
【ニコニコ動画】伊織「My Things」Alpha【NoNoWire09】

作者:ハニハニP
圧倒的な光量の中で踊る伊織。その姿は時に半ば光に溶け、触れる事の許されない様な、「生」を感じさせない程の透明度を感じさせます。
幻想的な曲とも相まって、夢現の狭間に放り込まれた様な感覚を覚るこの作品、やはり際立つのは伊織という存在の強さです。
わずかに挿入されるカラー&クローズアップでの伊織も、その強さを強調している様。
【ニコニコ動画】律子はゐるのか【NoNoWire09】

作者:たななしP
再生時間15分にも及ぶ、非常に長いPV。
繰り返されるシンプルなメロディーの中で、徐々にディテールを失っていく律子の姿。最終的には輪郭すら失われ、光と影の塊の様な姿へと変わってしまいます。
しかし、動画を最初から通して見れば、15分後のそれは確かに「律子」に見えるんです。長い時間をかける事で見る側に律子の姿を焼き付け、その姿が画面からほぼ失われてもイメージさせてしまう。
時間がある時に、ふと見たくなってしまう。不思議な作品です。
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これらの作品を並べてみると、共通しているのはアイドルの遠さと、それにも関わらず感じられる存在感の強さ。Pの中でアイドルに対する想いが強くなりすぎると、彼女達は手の届かない存在になってしまうのでしょうか。それとも、手が届かないと感じるが故に作品に強い思いを乗せるのでしょうか。
見る専の私にはわかりませんが、作品に込められたエネルギーみたいなものは感じられます。
最後に、別の意味で「ああ、これは別の世界だなぁ」と感じた作品をひとつ。
【ニコニコ動画】俺視点美希。

作者:whoP
こんなん割りこめるか!お幸せに。