邪推の怖さと楽しさ

4ヶ月くらいの間、何度も見ている動画のひとつを御紹介。
アイドルマスター2 真美 「Defying Gravity」

作:つばめP

観客のいないステージ、審査員としてひとり見つめる律子の前で、同じ曲を歌い踊る真美と亜美。
これはオーディションであり、フェスでもあります。
で、律子がふたりを審査するといったら、普通に考えれば竜宮小町のメンバー選出の為、という事になり、
実際つばめPは御自身のブログでも、その様に解説されています。
つばめの巣:久しぶりに

ざっくり言えば「亜美・真美の竜宮小町入りのためのオーディション」ですね。
作ってるときに思ったのは真美は今も昔も選ばれない子なんだなってことですかね。
無印のラストライブ、今回の選出。いずれにしても亜美が選ばれちゃうんですよね。
.
なんで律子は真美じゃなく亜美を選んだのか。それぞれ思うところはあるでしょう。
真美の方がお姉さんだから?とかねw

つばめPはアイドルマスター2で「やよい・美希・真美」というユニットの一年間をプロデュースする活動を
続けておられる方で、この「Defying Gravity」はその前日譚。
そう捉えるのが自然だし、つばめPの意図に沿うものだとわかってはいます。が。
私にはそうは見えなかったんですよね。
まず第一に、ふたりの衣装が初期に入手できるものではないという事。
真美のストライプフォレスターDLCものですし。
第二に、「律子が竜宮小町のメンバーとして二人のうち一人を選んだ」という設定への違和感。
ふたりは「竜宮小町双海亜美」として二人一役であったのを、ふたりの意思で独立したアイドルとなったはず。
そして第三に、選曲。
この動画で用いられている「Defying Gravity」は、つばめPが御指摘されている通り米国のドラマ「Gree」で
歌われたものですが、元々はミュージカル「Wicked」で歌われているもの。
このミュージカルは特にアメリカの学生に絶大な支持を得ており、必須教養の様なものとなっているとか。
ストーリーとしては、絶大な魔力を秘めていながら外見の醜さゆえに迫害を受ける少女「エルファバ」と、
力では劣るものの世渡り上手な少女「グリンダ」、ふたりの友情と別離、そして成長を主軸とした、
オズの魔法使い」の前日譚となっています。
その第一幕のラスト、エルファバが自分を縛りつけていた者達との決別を宣言し、
グリンダと互いに友情を誓いながら独りオズを離れるシーンで歌われるのが、この曲なのです。
「Defying Gravity(重力に抗って)」というタイトルは、直接的には魔女であるエルファバが箒で空を飛ぶ姿をさしますが、
つまり子供時代との別れであり、偏見や常識といった束縛からの自立を意味するもの。
(この辺は歌単体の歌詞を見てもわからない部分であり、外国語曲を邦訳するにあたっての難しい部分でもあります)
そうした曲を歌いこなす(真美が担当する男声パートが音を外すドラマ音源ではなく、後に歌われる完成形である)事を、
律子が真美と亜美に課すシチュエーションってどんなものだろう?と想像して思いついたのが、
「真美のIA完全制覇から一年後、亜美と共にハリウッドで映画デビューをする為に渡米する直前」
というもの。
律子は竜宮小町のプロデュースと同時に、Pのいない時期は真美の面倒も見ていたことがエピローグで語られており、
また真美と亜美は「ハリウッドデビューの為に映画の仕事をやりまくった」とも申告しています。
そんな二人、自分の手を離れていく真美と亜美への、律子からの卒業試験がこの「Defying Gravity」だったのかな、と。

動画タイトルに「真美」とあるのは、これが真美シナリオのエピローグだから、とか。
そんな事を、動画を何度か見て、独自に歌詞を邦訳したりしているうちに想像したワケです。
たぶんハズレだろうなと思っていましたし、事実そうだったワケですが、少なくとも私にとって、この動画はそうした一面を持つものとなりました。
動画を他の方へ紹介するにあたり、こうした邪推の類は邪魔となるものですし、制作者の意図を無視していると言われてもしょうがない。
でも、ひとつの動画について色々と考え、自分だけの物語を心に描く楽しみというのもまた、確かに存在するわけで。
そもそも、こんだけ長々と考えずにいられないのは、この真美と亜美、そして律子が大好きだからに他ならず、
つばめPには今後とも突き進んでいってほしいなと期待しています。
向日葵娘の物語については、やよいPの端くれとして思うところがあったりなかったり。それも含めて、ね。